自分で守ろう大切な歯フッ化物でむし歯予防! 井上 泰
■むし歯はなぜできるのでしょうか?
私たちの歯の表面では毎日、脱灰 ・再石灰化がくり返されています。脱灰とは、歯の成分が食べ物によってできる酸に溶かされることをいい、 再石灰化とは、脱灰の状態が元に戻ることをいいます。この2つのパランスが崩れて再石灰化が追いつかず、歯の成分が溶け出したままになるとむし歯が進行します。 それを予防するのに1番大切なのが、適切な歯プラシです。しかしながら、子供の時は上手に歯ブラシができなかったり、甘いお菓子を多く食べたりしがちです。そのため、むし指を予防するフッ化物やキシリトールを使うことが有効になります。ここでは、そのフッ化物についてお話します。 ■フッ化物とは何でしょうか?
フッ化物は私たちの身の回りのあらゆるものに含まれています。白米にもパンにも塩やイワシや海藻や牛乳にも含まれています。 私たちは、食物からフッ化物を取っていますが、歯や骨にとって欠くことのできない必須栄養素として、大人で1日3mg必要とされています。 適量なフッ化物はむし歯になりにくい強い歯を作り、正常な骨格を作ります。しかしながら、食物から摂取するだけでは、むし歯予防の効果が低く、より効果を上げるためにフッ化物を直接歯に塗布する方法がとられています。
フッ化物の塗布による効果には、 1.歯を強くする。
歯の表面からフッ化物が取り込まれ、むし歯菌によって作られた酸に溶けにくい強い歯が作られます。 2.再石灰化を促進する。
むし歯で穴のあいてしまった歯は自然には治りませんが、カルシウム等のミネラルが溶け出したむし歯になり始めの歯では元に戻ることが期待でき、フッ化物は再石灰化の働きを助けます。 3.むし歯の働きを抑制する。
むし歯は口の中に住んでいる細菌がおこす病気です 。フッ化物はこのむし歯の原因菌の働きを抑えます。 ■フッ化物洗口のむし歯予防の効果は?
1945年頃から開始されたフッ化物洗口は、現在世界中で実施されており、神奈川県でも30年の歴史があります。神奈川県下の某小学校でフッ化物洗口によるむし歯予防効果を実施したところフッ化物洗口実施期間が長い程むし歯予防効果高くなり、とくに3年生から 6年生までのむし歯の本数は約半分に減ったことがわかりました。
では、そのフッ化物は安全でしょうか? むし歯予防のためのフッ化物利用は、WHO(世界保健機関)など多くの専門機関が推奨する科学的な根拠に基づく方法で安全なことが実証されています。 ■フッ化物の利用方法について
フッ化物は家庭や歯医者さんで取り入れる方法がいくつかあります。
1.歯科医師や歯科衛生士が直接歯にフッ化物を塗る方法や、フッ化物配合の合成樹脂で歯の溝を封鎖し、むし歯を予防するフィッシャーシーラントがあります。 また、4~5歳以上を対象にフッ化物洗口剤でプクプクうがいをする方法もあります。 秦野伊勢原歯科医師会では、毎年6月に行われる歯と口の健康週間の催しでフッ化物塗やフッ化物洗口の体験事業を行っています。 2.家庭内などでフッ化物入り歯みがき剤を使用したり、飲み込んでも害のない濃度の フッ化物の薬剤をスプレーして歯の表面に直接塗ったりする方法があります。
以上のようにフッ化物は、むし歯予防に大変効果があります。しかしながら、最初に述べたように毎日行うブラッシングが最も大切です。昔 、フッ化物が世の中に普及し始めたころ、逆にむし歯が増えた時期がありました。それは、フッ化物を塗ればむし歯にならない、と勘違いしてしまい、ブラッシングをおろそかにしたからだそうです 。 正しいブラッシングを行い、フッ化物を上手に使って健康な歯を保ちましょう。 (参考資料 神奈川県歯科医師会)